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ダン・ギルバート 未来の自分に対する心理

人間というのは未完成のくせに、自分たちは完成したと勘違いしているものだ」ギルバートは語りかける。ここでは、130万ビューを超える Dan Gilbert のTED講演を訳し、「歴史の終わり幻想」と呼ばれる未来の自分に対する心理について理解する。

要約

「人間というのは未完成のくせに、自分たちは完成したと勘違いしているものだ」ダン・ギルバートが紹介するのは、彼が「歴史の終わり幻想」と呼ぶ現象についての最近の研究です。将来の自分は、ずっと今の自分のままだろうと想像してしまう現象です(でもそうは行きません)

Harvard psychologist Dan Gilbert says our beliefs about what will make us happy are often wrong — a premise he supports with intriguing research, and explains in his accessible and unexpectedly funny book, Stumbling on Happiness.

 

1 なぜ私たちは未来の自分が後悔することになるような決断をするのか

人生の どの段階においても 私たちは その後の人生に 大いに影響する 決断をするわけですが いざ「その後」になってみると 過去の自分の決断に 喜ぶとは限りません。だから若者は10代の頃に 大枚はたいて彫ったタトゥーを また大枚はたいて除去します。中高年が離婚に急ぐ相手は 若い頃 結婚に急いだ相手です。高齢者が懸命に減らそうとしているのは 中年の頃 懸命に増やそうとしたものです ずっと同じパターンです。心理学者の私が夢中になっている 疑問は これです。なぜ私たちは 未来の自分が 後悔することになるような 決断をするのか

 

2 私たちは皆、常に錯覚を抱えている

これからご説明しますが その理由の1つは 時間の持つ力について 私たちが根本的に 思い違いをしているせいだと考えています。人生が進むにつれ変化が遅くなるのは 皆さん ご存じですね。子どもは分単位で 変化しているように見えますが 親の変化は年単位にしか 見えないというわけです。人生における この不思議な分岐点 ― 変化が突然 猛スピードから ノロノロになるのは いつなのでしょう 10代のうち? 中年になってから? 老年期? その答えは 何と ほとんどの人にとって「今」です。どんな時も「今」なのです。皆さんに納得していただきたいのは 私たちが皆 常に錯覚を抱えているということです。自分の過去 自分の歴史が終わり ずっとなるはずだった ― 本当の自分に 最近なったばかり 残りの人生は このままの自分で行く という錯覚です。

 

3 喜び、成功、誠実さという3つの価値観の経年変化を調べた研究

この主張を裏付けるデータがあります。人の価値観の 経年変化を調べた研究です。喜び 成功 誠実さ という 3つの価値です。皆さん3つとも お持ちですね 成長に伴い 年齢を重ねるにつれ 3つのバランスが変わるというのも ご存じでしょう。何故 そうなるのでしょうか。何千もの人に尋ねてみました。半分の人には 今後10年で 価値観が どれくらい変わるか 予想してもらいました。もう半分の人には 過去10年で価値観が どれくらい変わったか聞きました。これによって 実に興味深い分析ができました。たとえば18歳の人たちの予想と 28歳の人たちの振り返りとを 比較するといった具合で あらゆる年代を網羅した分析ができました。

 

4 18歳が予測する変化は、50歳の報告した変化と同じ

結果はこうです。まず当たっていたのは 年齢と共に 変化は緩やかになるということです。しかし間違っていたのは そのペースが思ったほど遅くないのです。データによると18~68歳の どの年齢でも 今後10年間で経験する変化を 大幅に少なく見積もりました。これを「歴史の終わり幻想」と 呼んでいます。この結果の大きさを示すために 2つをつなげてみましょう。18歳が予測する変化は 50歳の報告した変化と 同じだということが わかります。

 

5 情緒不安定性、開放性、調和性、外向性、勤勉性という性格特性でも同じ

価値観だけではありません。他のどんなことでもそうです。たとえば性格 性格特性を5つの因子に分けて 現代の心理学者が論じているのは ご存じでしょう。情緒不安定性 開放性 調和性 外向性 勤勉性です。今一度 尋ねました。今後10年間で どのくらい変化すると思うか そして過去10年間で どのくらい変化したか 結果は こちらです。同じ図が何度も出てきますよ。やはり 年齢と共に 変化は緩やかになりますが 今後10年間で 自分の性格が どれくらい変わるか どの年齢でも 少なく見積もっています。

 

6 「いやぁ 変わっちゃったよ」

価値観や性格のように 一過性のものだけではありません。好き嫌い つまり基本的な好みについて 聞いたっていいですよ。たとえば 一番の親友や お気に入りの休暇の過ごし方 お気に入りの趣味 お気に入りの音楽を挙げてもらいます。答えられますよね。半分の人たちへの質問は 「今後10年で変わると思いますか?」 残りの半分への質問は 「過去10年で変わりましたか?」 結果は もう二度も ご覧になった通りですが これも同じです。予想では 現在の友達が 今後10年間も友達で 現在の楽しい休暇の過ごし方は 10年経っても同じですが 10年後の人たちは 口を揃えて言うのです 「いやぁ 変わっちゃったよ」

 

7 私たちは不変性を多く見積る

何か問題でしょうか。何も影響を生じない 単なる予測のミスでしょうか。いいえ 大問題です。理由をいくつか説明します。これが重要な局面での 私たちの意思決定を惑わせます。今 好きなミュージシャンと 10年前 好きだったミュージシャンを 思い浮かべてください。画面には私の例を挙げておきました。さて 人々に 答えてもらいました。現在 好きなミュージシャンが 10年後に開くコンサートのために 今 いくら払うかと聞いたところ そのチケット代の平均額は 129ドルでした。そして10年前に好きだった人が 今日 演奏するのを見るのに いくら払うかと聞いたところ 答えは たったの80ドル。理屈どおりに行けば 両者は同額になるはずですが 私たちは不変性を多く見積るために 現在の好みを満たす可能性に お金を出しすぎてしまうのです。

 

8 思い出す容易さと想像する難しさの相対的な差が関係している

何故こうなるのかは 明らかになっていませんが おそらくは 思い出す容易さと 想像する難しさの 相対的な差が関係しています。10年前の自分のことなら 思い出せますが これから先の自分を想像するのは難しい。すると私たちは誤って 想像が難しいということは 起きないのだろうと考えます。残念でした 「想像できない」と言うのは その人の想像力が 欠如しているという話であって 思い描いた出来事が 起きないということには なりません。

 

9 人生において変わらないのは「変わる」ということだけ

つまり 時間とは強力なものだ ということです。私たちの好みを変え 価値観を新たにし 性格を変えてしまいます。私たちが この事実を認めるのは 後になってからです。後から振り返った時にだけ 10年間で どれほど変化したか 気づくのです。ほとんどの人にとって 今という時は まるで魔法の時なのです。それは時の流れの分岐点。自分が いよいよ 本当の自分になる瞬間です。人間というのは未完成なくせに 自分たちは完成したと 勘違いしているものです。現在のあなたは 過去の どのあなたとも同じように はかない 束の間の存在です。人生において変わらないのは 「変わる」ということだけなのです。ありがとうございました(拍手)

最後に

なぜ私たちは未来の自分が後悔することになるような決断をするのか。私たちは皆、常に錯覚を抱えている。喜び、成功、誠実さという3つの価値観の経年変化を調べた研究。18歳が予測する変化は、50歳の報告した変化と同じ。情緒不安定性、開放性、調和性、外向性、勤勉性という性格特性でも同じ結果。私たちは不変性を多く見積る。思い出す容易さと想像する難しさの相対的な差が関係している。人生において変わらないのは「変わる」ということだけ。想像力は得た情報の質量で育まれる。人生は諸行無常

和訳してくださった Emi Kamiya 氏、レビューしてくださった Yuko Yoshida 氏に感謝する(2014年3月)。

明日の幸せを科学する(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)


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